教育山行 三ツ峠・屏風岩 RCT
リーダー:三根
メンバー:海輪・岩瀬・中山・ハナミズキ・耶麻
砂原・山口(陽)・ミルキー・吉崎(記録)
区分:教育山行
目的:RCTマルチピッチの向上
形態:RCT
日程:8/29
報告日:9/16
ルート:@右フェース
岩瀬・海輪 一般ルート→NO,10.5クラック→NO,15クラック→NO,18クラック →天狗の踊り場
ハナミズキ・耶麻 一般ルート→T字クラック→NO,15クラック→NO,18クラック→天狗の踊り場
中山・砂原 一般ルート→NO,10.5クラック→NO,15クラック→NO,18クラック →天狗の踊り場
山口・ミルキー 一般ルート→NO,10.5クラック→NO,15クラック→NO,18クラック →天狗の踊り場
三根・吉崎 一般ルート→クーロアール→NO,18クラック →天狗の踊り場
A中央フェース 全組中央カンテ
朝、始発電車で武蔵小杉に到着。駅前ロータリーに集合のはずだけれど、誰の姿も見えない。
向こうのベンチに、長くなって寝ている人が居るだけ。近寄らないように、遠巻きに観察すると
あれ?下にザックが置いてある。なぁんだ、耶麻さんじゃないですか。昨日、半日飲んでいたそうで、
二日酔いが辛そう。コンビニに行っていた海輪さんと岩瀬さんが戻って来て、砂原さんもキタキツネ号で到着。
ミズキさん、三根さん、電車が遅れたグッチさんも無事集合し、五時半過ぎに出発。
岩瀬号とキタキツネ号は快調に中央道を飛ばし、七時半頃、裏三ツ峠の駐車スペースに到着した。
登攀用具でずっしりと重いザックを背負い、ここから岩場まで約一時間の林道歩きが始まる。
今日は教育山行の岩登り講習で、私にとって記念すべき、初マルチピッチクライミング。
柴笛の熟練&俊英クライマーが顔を揃え、生徒は私唯一人。もったいない贅沢さ。
四日前の机上講習で、三根さんから支点の作り方と、セルフビレーのとり方をみっちり教わった。
家で復習もしたから、その辺りの作業は心配ないと思うけれど、問題はクライミング。
岩場へ行くのは数ヶ月ぶりだし、ジムでも全然登れていない。
三ツ峠は、今まで行ったことのある幕岩や広沢寺とは違い、‘ほんちゃん’に近いと聞く。
力尽きて落ちたらどうしよう。他の人に怪我をさせるんじゃなかろうか。
普段山へ向かう時のうきうきした気分から程遠く、とても緊張しながら林道を登って行く。
天気は曇りで涼しく、岩トレにはちょうどよさそうだけれど、昨日雨が降ったから岩が濡れていて
滑るかもしれない、と誰かが話すのを聞き、帰りたくなった。
八時半頃、山荘四季楽園に着き小休止をとっていると、まんさんとミルキーさんが汗だくで登場。
ミルキーさんが今日予定していた乾徳山の岩トレが中止になり、急遽、まんさんを誘って合流した次第。
パーティーが一気に賑やかになる。九時頃、屏風岩右フェイスに到着。霧が湧いてきて、雨も降りそうなので
雨具の上にハーネスを着け、いよいよトレーニング開始。
岩瀬・海輪、ハナミズキ・耶麻、中山・砂原、ミルキー・山口でペアを組み、三根さんが今日も私に教えて下さる。
用具のチェックを受け、ビレーポイントで支点作りの実地講習。隣のパーティーの男の人が傍に来て、
一緒に三根さんの説明を聞いている。ははぁ、この「川嶋氏」も私と同じ初心者なのね、きっと。
川嶋氏が全国労山の事務局長と知り驚くのは、後日の話。
メンバーが皆1ピッチ目を登り終え、いよいよ我々の番が来た。「じゃあ、ヨロシク」三根さんの力強い声に、
ロープをぎゅっと握り締め、ビレーに意識を集中させる。と、あっという間に第一バンドへ上がってしまい、ビレー解除の声が掛かる。えーっと、全部外していいんだっけ?「初心者仲間の川嶋氏」の視線を感じつつ、恐る恐るATCを取り、足元のロープの束が三根さんに引き上げられてゆくのを眺めていると「ロープを引き上げ易く手繰ってー」と声が届く。すみません、ボーっとしていて。マルチピッチはパートナーと力を合わせてルートを登るのだ、ということを認識する。ロープがいっぱいまで引き上げられて「ヨッシー、どうぞ!」の声に、ドキドキしながら岩に手を掛け、ヨイショッと身体を持ち上げるが、ぐいっと引き戻された。おっと、セルフビレーを外すのを忘れてました。
ほとんど三根さんにひっぱり上げられるようにして、なんとかバンドの上に這い上がり、それで次は何をするの?と支点を見つめたまましばし固まる。セルフビレーをとる様に促され、もたもたとメインロープでインクノットをつくる。あんなに教わったのに、この辺の作業は問題無いと自負していたのに、頭の中が白紙になってしまった。岩瀬さんが、何遍も繰り返し身体に覚えさせて、無意識でも出来るようにならなくちゃだめだよ、と教えてくれたこと思い出す。そこに達するまでの道のりは、相当に長そうだ。「ビレー解除って言って」と言われ「ビレー解除・・」とオウム返し。そこで初めて三根さんが私をビレーしていた手を緩める。ひとつひとつ、お互いに確認。
2ピッチ目も三根さんがリード。上の方から、「三根さーん、T字クラック登ったよー」とミズキさんの弾む声。
他のメンバー達のコールしあう声も聞こえて、とても賑やか。
「我々は、まっすぐクーロワールを登ろう」と指差す先に、垂直の壁がそびえる。はぁ、と返事がため息になってしまう。上部の両側の岩が迫って、狭くかぶっているところを、ウーンと気合いを入れて登り上げた三根さんが、
ここはちょっと難しいかもしれない、と言ってスリングを垂らしてくれた。自分で登ってみると、下で見ているよりずっと岩がかぶさっていて、頭がつかえ、身体を外に出さないと登れない。凄く怖い。スリングにしがみついて
ようやく上にあがった。こんな風では、リードなんて到底無理。皆、すごいなあ。そういえばいつの間にか誰の声もしなくなり、辺りが静かになっている。もう頂上に着いたのかな。天気が良ければ、ここから富士山がどーんと見えるそうだ。
小さなテラスから、三根さんのお助けロープに頼りながら、第二バンド下に到着。そこから第二バンドまでの少し間を、リードさせてもらう。第二バンドで自分のATCガイドを支点に掛けて、フォローのビレーを練習。しかし、ロープを引いてもびくとも動かない。あせっている間に、三根さんがスタスタと登ってきてしまった。道具を現場で初めて使うのは危険。予習の大切さを痛感する。余ったロープを引き上げる。垂れたロープはとても重く、力を使う作業で疲れてしまう。三根さんは、このロープの先さらに重量級の私がぶら下がっているのを引き上げていたのだ。本当に申し訳ありません・・・。束ねたロープの受け渡し方法を教わり、三根さんリードで第三バンドに到着すると、久しぶりに他のメンバーと再会した。皆さん早々と、頂上まで行って懸垂下降で下りてきたところ。
ここから頂上まで階段状のクラックを登り、十二時過ぎに、広々とした天狗の踊り場へ出た。
少し休憩をとって、懸垂下降の準備にとりかかる。二本のロープをエイトノットで一本にして、支点リングに直接通す。この時、結び目を下側、岩に近い側にした方が回収する時に摩擦がかかりにくいこと、回収する時に引く側のロープの色を必ず覚えること、ロープの末端に結び目を作ってすっぽ抜けを防ぐこと、石を落とさない様に気をつけることなどを教わる。下降器はエイト環に取り替える。いずれは、ATCでの下降と、エイト環でのビレーも練習したい。「大根おろし」の鮫肌のような岩壁を右手に見ながら1ピッチ降りて、ロープ回収、ロープセットを行う。何かの拍子にロープが、のびたスパゲッティー状に絡まってしまい、少し手間取る。懸垂下降は早いようだけれど、意外に時間が掛かる場合があるので注意、と教わる。第二バンドに降り立った頃、霧の壁が一瞬切れて、向こうの岩場のテラスに居るパーティーが見える。「ヨッシー!」と登りながら大きく手を振るその声は、岩瀬さん。中央フェイスに移動して、もう登り始めている。写真を撮ろうとカメラを出したが、あっという間に霧に遮られてしまった。ようやくの思いで地面に戻り、最後にロープ回収をした時に石を落とし、隣りのパーティーの人をびっくりさせた。まったく気が抜けない。
荷物のところへ戻ると、スニーカーの上に置手紙がある。天気図の裏に「我々は、中央カンテをやっつけにいってきまーす!」と勇ましい書き付け。さて我々も皆の登りを眺めながらお昼にしよう、と中央フェイスヘ行く。全員が中央カンテを登るらしく、第一バンドで順番待ち中。午後は、岩瀬・海輪、ハナミズキ・山口、中山・ミルキー、耶麻・砂原の組み合わせ。登りながら手を振るミズキさんに、がんばってー、と声を掛ける。昼食を終え、荷物の所へ行って戻ってきてもまだ、中山ペアと耶麻ペアが登っていない。岩場の順番待ちってこういうことなのね、と納得する。これが冬山ならば、相当厳しい状況だろう。三根さんはとてもお疲れの様子だが、登りたそうな私の様子を察したのだろう、「行こう!」と腰を上げた。午前中に比べ、作業が大分スムーズに出来る。第一バンドで皆に並ぶ。耶麻さんがリードで左上ランペを登り、そこで1ピッチを切らず、上のテラスでクラックへの順番待ち。朝の不調がうそのように、すごく元気。フォローの砂原さんは、文字通りあっという間に登って行く。このルートも、全てリードは三根さんにお任せし、左上ランペとクラックを無我夢中で登る。そして、小さなテラスで最後のビレーをする。クラックの入った岩の傾斜が、上に行くにつれグッときつくなり、突き当たりに覆いかぶさる岩の外側へ廻り込む、ここが核心、と三根さんが私に叫ぶ。手の置き場、足の置き場をひとつひとつ示してくれた後、岩の裏へ姿が消えた。暫くして「ヨッシー、どうぞ!」の声に、私もゆっくり登り始める。上のほうから心配する声が聞こえるが、返事をする余裕が無い。三根さんの示した通りに手を置き、足を置き、岩の外側へ廻る。身体が空中に出てしまう様な感じがして恐ろしい。霧で下が見えないのがせめてもの救い。「核心、越えましたぁ〜」と姿が見えない三根さんへ告げる。ハア、よかった。なんとか登れた。やっぱり引っ張り上げてもらったのだけれども、とても嬉しい。自分のロープを束ねて背負い、海輪さん達が残置してくれたロープで、一気に第一バンドまで懸垂下降し、無事、皆の待つ地上へ降り立った。そして荷物をまとめ、来るときは気に留めなかった風露草や巴塩竈などの花々を楽しみながら、夕暮れの山道を下山した。
三根さん、貴重なお休みの一日を私の為に費やして下さって、本当にありがとうございました。基本から実践まで、丁寧に教えて頂いた沢山のことは、私の財産です。それらのことがしっかり身に着くよう、これからもトレーニングを積んで行きたいと思います。