五竜岳から鹿島槍ヶ岳
2004.7.23-7.26 佐々木
山菜山行で、後立山の姿を見て、前からあこがれていた鹿島槍に行きたくてたまら
なくなった。
井口さんの、行ってらっしゃい。の言葉に後押しされ、決行。
本当は針の木まで行きたかったけれど、日程の都合で柏原新道を下山ルートにする。
新宿21:00発のあずさに乗り込む。車内はすいている。とにかく、体力を少しでも
ためようと、できるだけ寝る。
松本駅についてみたら、以前はずっといられた構内が、0:30から3:45までシャッター
を閉めるとの事。外に出て、階段を下りて直ぐのところでザックを枕に寝る。
うとうとしていたら、複数の足音と私の顔の上で話し声が。む?とぱっちり目を開けると、
「あっ!」
私も覗いていた人も、同時に驚いて声をあげる。
覗いていたのは、爽やかな若い警官と若くてかわいい婦人警官。
「大丈夫ですか?」
「・・・・はあ。寝ているだけです・・・」
女性が一人という事で、心配してくれていた。周りには、山屋は誰もいず、ましてや路上
で寝ているのは、わたしだけ。おまわりさん、ありがとう。女性に見てくれて!
シャッターの開く音に目覚め、駅へ登り、待合室で再び寝る。大糸線も、信濃大町まで寝る。
さすがにそこから先は、寝過ごすとまずいので起きていた。
神城駅に着いたのはいいが、キャビンの駅への行き方がよくわからない。
駅の中の登山相談所に声をかけると、今、マイクロバスを出すとの事。やった!
キャビンは10キロ超える荷物には200円。はかってみたら、15キロだった。
がんばって背負うぞ!
キャビンやリフトの係員の人たちはとても感じがよく、わたしも笑顔で挨拶をする。
しかし、笑っていられたのも、そこまでだった。
遠見尾根は、ものすごく暑かった!登る人も下山する人も、すれ違う度に
「暑いですねぇ。」
が、合言葉。風も全くなく、しかも、木の階段が次々あらわれる。ガスも濃く、
眺望も全くない。大汗をかきながらひたすら登る。
西遠見のあたりから、やっと涼しくなってきた。ほっとして進み、稜線に出ると、
目の前に白岳のすごい登りが。春に来た時は、雪庇が大変怖かったけど、あの雪の
下に、このようなものが隠れていたのね・・・。
30分ごとに休憩をとり、急登、鎖場、岩場を越えていく。一瞬ガスが晴れ、ちらりと
見えた小屋の場所を頭にきざみ、がんばる。花が咲き誇り、空気の中に花の香りが一杯
にただよっていたが、へたれな私は、登るのに精一杯で心から花を楽しむ
ゆとりはない。
やっと、白岳の頂上に着く。呼吸を整えてから、白馬の方向へ向かって、今日登っている
海輪さんに向かって手を振る。海輪さん、テレパシー通じたかしら?
張る場所がないかも、と心配していたけれど、テントはまだ3張りしか張られておらず、
いい場所に張る事ができた。
そしてもちろん、小屋でビールを入手!ガスがときおり晴れて、五竜を見る事ができた。
食欲・呑欲を満たし、昼寝に突入。
たくさんの人声に目覚めると、小屋の前に、ものすごい人数が。今夜の小屋はすごく混み
そうだ。
夕飯を食べ、16:30に寝る。明日は3時に起きて、4時に出発しよう。
ところが、暑くて目が覚めた。19:30。ついでにトイレに行き、戻ってくる途中にピカッ
と光る。
もしかして、雷?テントに入る寸前にふりだした。ああ、テントがこれで重くなる。
今日は2リットル水を持ってきたけど、明日は1リットルにして少し軽くなると喜んで
いたのに。
私の気持ちにはおかまいなく、雷と雨は続く・・・。
地蔵の頭 8:38- 五竜山荘 13:48
足音と話し声で目が覚める。しまった!4:14!寝過ごした!あわててお湯を沸かし、
コーヒーを飲み、頭をしゃっきりさせ、食事はあきらめ、ブドウ糖を口に放り込む。
急いで準備をし、五竜へ向かう。小屋からピストンする人たちで、道は大変混んでいる。
岩場の通過で、下山の人を私の前にいた人が先に通したら、便乗して次々におりてくる。
15人通したところで、叫ぶ。
「すいません、そこでストップしてください!もう15人通しているんです!」
登りの人から感謝の言葉をいただいた。
この頃に、本日最初の雷の音が。うわーっ。
五竜で一休みをし、気合を入れて、八峰キレットめざし、下る。こちらへ向かう人は
ほとんどいない。さっそく始まる、鎖場、岩場!きちんと覚えていて、報告書に書こうと
思っていたけれど、キレット小屋まで全部がそういう道で、とても覚えていられなかった。
とにかく、一歩を慎重に、絶対に落ちるものかとがんばる。一歩間違ったら、滑落大怪我
という場所ばかりだった。がんばれ、あたしと言い聞かせると、単純なO型の血は燃え立ち、
ぜえぜえはあはあ言っていたのが、どこかから力が湧いてきて、がんばれた。
ひたすら登り続けていたのが、下りになってきた。キレット小屋が近づいてきたようだ。
進んでいくと、ガスが晴れ、目の前にキレット小屋が現れた!小屋が見えると嬉しいものだが、
今回は今までで最高に嬉しかった。
大休止を取る。ここまでくる途中、追いついたり追い越したりした人たちと、がんばろうね、
と励ましあう。
キレット小屋は、改築したてで、とても綺麗だった。登山者にとって、本当に安心させて
もらえる場所に建てられている小屋だと思った。
小屋から30分ほどは、鎖場やはしごが続く。でも、さっきまでと比べると、楽だった。
雨がさーっと降ってきた。雨具とザックカバーをかける。雨具を着ると暑いのよね。
岩場の通過なのに、暑くて嫌だなぁと思っていると、10分ほどで晴れてくれた。
ガスで眺望はない。ひたすら、岩場の通過をがんばるだけ。
そして、やっと、見えた!北峰!!ああ、やった!!感動と共に、分岐点にザックを下ろし、
空身で北峰を目指す。そして、東尾根にむかって、お礼の言葉。6人の皆さん、守って
くださって、ありがとう。この私が、無事にここまで来れました。残すところは、南峰。
がんばります、お守りください。柴笛を、これからも、見守っていてくださいね。
分岐点に戻る途中で、雷鳥の親子に会えた。雛は二匹。少ないな。おこじょに食べられて
しまったのかも。母鳥は、カメラ視線を決めてくれた。
ペースが同じ人たちと、南峰をみつめながら、本日最後の登りだ、がんばろう!と声を
掛け合う。
やっと、到着!嬉しい、とても嬉しい!!東尾根へ、やりました!と報告する。
時々晴れるガスから見えた、冷池の小屋の位置、道の付き方をしっかり覚え、湧き上がる
雲をにらみ、気合を入れて下山開始!今日は一日ゴロゴロいっていたが、ほんとうに、
そろそろ危ない。得意の下山で、降り出す前にテントを張ろう!
樹林帯に入ると、空気がなんて濃いのだろうと感じる。木の香りもただよっている。
ますます濃くなるガスの中を進み、そろそろ小屋だ、と思っているとテントが現れた。
やった!
順番は違うけど、先にテントを張らせてもらう。張っている途中で、隣のテントの
おじさんが、プシュッと、おいしそうな音。そう、缶ビールの開く音。
「うわー、いい音!」
「山でのこれは、最高ですよね。」
と、意見の一致。
少し降るかも、と雨具の上だけ着て、小屋へ受付しに下る。受付をして、
カップラーメンにお湯を入れてもらっていると、ドッカーン、ザーーーーッ!!!!!
そう。雷雨がとうとう。ものすごい。ラーメンを持って外の屋根の下で食べていた
のだが、雹まで落ちてきて、跳ねて私のラーメンの中に入ってくる。
とにかくものすごい雨と雷。水を買っている途中で、もうびしょぬれになってしまった。
滝のような登山道を登り、テントへもぐりこむ。雨具の下をつけ、ひたすら雷雨に耐える。
山で何度も雷にあっているけど、こんなにすごい雷雨は始めてだ。風も強くなり、
テントが激しく左右に揺れる。うわ、つぶれないでね、がんばって、お願い!耳をつんざく
とは、まさしくこの音をいうのだわ。温度が下がり、寒くなってきたが、テントが揺れて
いるので、ガスはつけられない。あっ、フライがペグからはずれてしまった。
ビールを早く飲みたくて、深くさしてなかったのよね。それなのに、水とビール、
同時にこの雷雨の中持てないので、ビールあきらめたのよね。悲しい・・・・。
二時間ほどして、雨が弱まった。急いで外に出て、フライを直す。他のテントの人たちも
出てきていて、
「すごいですね、まいったねぇ。」
と、口々に言う。
ガスをつけ、暖をとる。再び、激しい雷雨が始まる。テントの外から人声。小屋に向かう
人たちだ。そういえば、南峰から下りてくる時に、正真正銘、空身、ストックしか持たずに
登ってきていた高年の人がたくさんいた。あの人たちは、どうしたのだろう?ピストンする
といっても、小屋から南峰の距離だったら、水と雨具と非常食くらいは持たないといけないと
思うなぁ。
雷雨の中、夕食を食べ、寝る。しかし、うとうとし始めると、ひときわ大きな雷が鳴り響く。
騒音の中でも寝られる私を目覚めさせる大きな音。まいったなぁ。
15:15くらいに始まって、今18:30。まだまだ勢いはおさまらない。それでも、何度か寝返りを
うつうちに、寝てしまった。
寒さと空腹に目覚めると、21:00すぎだった。静かだ。雷雨がおさまっている。
テントの中は湿気があがり、軽量化のためシュラフカバーをもってきてなかったので、
シュラフがぬれている。外を見ると、爺ガ岳やその他の山々がシルエットになって浮かんでいる。
町の明かりも見える。しばし、夜の風景を楽しみ、音をたてないよう、静かにラーメンを作って
食べる。ガスをつけて、テントの中を乾かした後、再び寝る。
五竜山荘 5:15- キレット小屋 9:51 10:30 – 北峰 12:03-冷池山荘 14:28
4時半起床。
テントから出ると爽やかな朝。ぐるりと山々を見渡せる。
他のテントの人たちと、昨日の雷雨の話をしていると、小屋から出発してきた人が、
「柏原新道も赤岩尾根も、通行不能だそうですよ。」
テン場の人々は硬直する。どうやって下りよう?予備日、一日とってあるけど、一日では針の木
まではいけないし・・・・。小屋に行って確かめてこよう。小屋へ行く途中で、ご来光を
見る事ができた。
小屋をのぞくと、朝食が始まり、ごったがえしている。小屋泊まりの人に聞いてみると、
今、両方、二度目の偵察に出かけているそうだ。
小屋の前のベンチに座って待っていると、放送が流れる。
「柏原新道は、小屋のすぐ下が土砂崩れのため通行不能。赤岩尾根は、上部にやや不安定な
所があるが、通行できます。ただし、慎重に通過してください。」
下りられる!でも、大谷原からタクシー代、いくらかかるかしら。歩ける所まで歩いて、
そこからタクシーを呼ぼう。
テン場に戻り、皆に報告する。下りられると聞き、皆、ほっとしていた。
爺が岳の登りに気合を入れようと思っていたので、やや気が抜けてしまい、ゆっくり朝食を
食べる。小屋から登ってきた人たちが、通りすがりに、昨日の雷雨、大丈夫でしたか?と声を
かけてくれた。
テントを撤収し、気合を入れなおし、下山を開始。小屋で最終確認すると、やはり赤岩尾根
しか使えないとのこと。携帯をとりだし、大澤代表に下山ルートの変更を連絡する。早朝、
起こしてごめんなさい!
赤岩尾根の分岐に、小屋のお兄さんが立っていて、30分間は不安定な所が続くので、
慎重に下りてくださいとの事。私の前を40人くらいのパーティーが歩いている。
しばらく待って、間をあける。
濡れてつるつるすべる、赤土と赤い岩のやせ尾根。鎖場やはしごが続く。30人パーティーに
おいついてしまった。先へ通してもらい、慎重におりていくと、登山道のそばで、寝ている人が。
そして人だかり。寝ていると思った人は、血まみれだった!事故だ。はしごから、滑落して
しまったそうだ。わたしが着いた時には、若い山なれた青年が、事故者の仲間に指示を与え、
そして駆け降りて行った。彼がひきあげてくれたそうだ。メンバーを見ると、遠見尾根ですれ
違った人たちだ。誰をリーダーにするかで、もめ始めていた・・・・。
パーティーをいくつか追い越して、ペースが同じ人たちと一緒になる。話していると、単独の
男性が扇沢に車をとりに戻るので、タクシーを予約しているから、一緒にのりませんか、
と誘ってくれた。わーい、ありがたい!
一緒に下りている人たちも、追い越した人たちも、さっきの事故を見たもので、皆、はしごに
トラウマを持ってしまった。はしごが次々に現れる。お互いに、
「ゆっくり慎重にね。」
と、声を掛け合う。
快調なペースで下山を続け、とうとう西俣出合に到着!砂防ダムのトンネルを抜け、休憩。
ダムの彼方へ、無事下山できました、とお礼を言う。約一ヶ月後にまた来る事ができた。
なつかしい林道を相乗りさせていただく男性と一緒に歩く。すっかり緑が濃くなっていた。
大谷原のゲートに着くと、タクシーが何台も止まっている。タクシーの運転手さんに、
方向別に振り分けられてしまい、相乗りを約束した男性とは、別々に。予約してなくても、
フリーのタクシーが次々やってきて、私はそちらに乗せられた。大町方面チームだ。
わたしだけ、薬師の湯の前で下ろしてもらう。まだすいていて、2,3人しか入っていない
風呂にゆっくり入り、そしてそして、昨日飲めなかった分も、湯上りにビールをしっかり飲む。
飲み終わった頃に、どんどん人がやってきて混んできたので、タクシーを呼んで、早めに
大町の駅へ行き、帰りのあずさのチケットを取り、再び駅前の蕎麦屋でビール、売店で
おやきと豚まんを食べまくる。ああ、満足!
あこがれの鹿島槍にとうとう行く事ができ、とても嬉しい。あのルートを行けたのは、
柴笛の皆さんのご指導の賜物。柴笛に入らなかったら、いけなかったと思う。
本当にありがとうございました。
私にとって、大きな財産となった山行である。これからも、がんばろう!
冷池山荘 6:14- 大谷原 10:32